「聖書への集中」

ルターにとって最も大切な課題は人間の罪とその赦しでした。彼が徹底して戒律を守ろうと努力したのはそのためでした。人間の心に潜む罪に対して鈍感な現代人が、ルターの罪に対する鋭敏さ真剣さ誠実さを笑うことは決してできません。

ルターが心の深みで神の赦しを確信したのは、聖書の徹底的な学びによってでした。彼が属したアウグスティヌス修道院では、一日に7回の定時祷で詩編を50編ほど唱えます。一週間に2回、詩編150編全部を唱え、これを毎週繰り返すのです。ルターは生涯詩編を手放すことはなく、彼が大学の講義で最初に取り上げたのも詩編であり、その後も繰り返し熱心に講義しています。

彼の信仰義認論に決定的な影響を与えたのは、詩編31:2と71:2の「神の義」(新共同訳「恵みの御業」)、それに続くローマ書、ガラテヤ書の学びでした。こうして「裁きの神」から「恵みの神」への大転換が生じたのです。これこそ神学者徳善義和先生の言われる「一点突破」、ここからついに宗教改革の歩みが始まったのです。