チンパンジーに言葉を教えるプロジェクト(アイ・プロジェクト)などで知られ松沢哲郎氏の『想像するちから―チンパンジーが教えてくれた人間の心』を読みました。
教えられたことの一つは、チンパンジーはヒト科であるということ。動物分類学上、ヒト科は四属。ヒト科ヒト属、ヒト科チンパンジー属、ヒト科ごゴリラ属、ヒト科オランウータン属。人間とチンパンジーの全ゲノムの違いはわずか1.2%、逆に言うと約98.8%は人間と同じ生きものだというのです。高慢を破られ、謙遜にさせられました。
では、人間とチンパンジーの違いは何か。それは想像するちからだと言うのです。チンパンジーはもっぱら現在に集中します。だから「自分はどうなってしまうのだろう」と将来を悲観したりはしないのです。しかし人間は過去や未来にも思いを馳せ、不安を感じもしますが、反対に希望を持つこともできるのです。また人間は自分の痛みを通して他者の痛みを想像します。パウロは「愛の讃歌」の中で繰り返し「もし愛がなければ」と言いました。愛こそは想像する力なのです。