福音書には多くの奇跡物語が記されています。若い頃は奇跡の記事に戸惑いを覚えたものですが、最近では反対に新鮮な興味を覚えるのです。様々な制限に幾重にも拘束されている現代、主イエスの時代に思いを馳せるとかえって解放されのびのびする気がするのです。当時の民衆も同じだったことでしょう。
イエスが五千人以上の人にパンと焼き魚を与えられたこの話はマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの四つの福音書すべてに記されており、四千人以上の人々への給食物語はマタイとマルコの二つの福音書に記されています。類似する話が何度も記されているのは、この話の核になるような出来事がきっとあったということでしょう。
主のお話の後、弟子たちは群衆を一刻も早散するよう提案しますが、主イエスは彼らと一緒に食事をしたいと望まれたのです。「パンは幾つあるのか。見て来なさい」「五つあります。それに魚が二匹です」。ここから驚くべき不思議が始まっていくのです。私たちもその場にいる群衆の一人になったつもりで学んでみることにしましょう。