新聞記者(西日本新聞)になった28年前、切った張ったの社会部は怖くて行きたくないと敬遠していましたが、振り返れば18年以上を社会部で過ごし、事件事故、災害、司法、医療取材などを通して世の不条理や生と死を見つめてきました。
昨年秋に社会部長になったとき、部員に伝えたのは「新聞記者が書くべきは『生の肯定』である」ということです。「どんなにつらく悲しい現実に向き合っても、記事の結論が絶望であってはならない。目を凝らし耳を澄まして、希望を見いだすこと」「ペンで社会を変えるのは記者の使命である。一方で取材・執筆を通して己自身の価値観や思想が変えられる経験もしてほしい」とも付け加えました。先月末の部長退任にあたっては、マルチン・ルターが語ったとされる言葉「たとえ明日世界が滅びようとも、今日私は林檎の木を植える」を紹介し、その意味を考えてもらいました。
「わたしの父は今もなお働いておられる。だから、わたしも働くのだ」(ヨハネによる福音書5章17節b)。こう言われた主イエスの働きが続けられていることを、週ごとの礼拝を通して新たに見いだしたいと願っています。(田川大介)