人類学、霊長類学者の山極寿一氏の『ゴリラは語る』は「15歳の寺子屋」シリーズの一冊です。「ゴリラの家にホームステイしてだいじなことを教わりました」「ゴリラは人間の鏡です」。
山極氏によれば、戦争の原因は4つ。第1は所有。第2は言葉。人間は言葉を持ったことで「あいつらは敵だ」「わたしたちにこんなことをした」と明瞭に示すことができるようになったのです。第3はアイデンティティ。自分が属する集団と属さない集団、そこに生じる味方と敵の区分けとそれに依る行動基準。第4は過剰な愛。愛は本来良いものでも、過ぎれば争いの原因となるのです。
ゴリラの世界にも時には争いがあります。ある時、大人のゴリラ二頭がにらみ合い喧嘩が始まるかと思われた寸前、子どもゴリラたちが両方にしがみついて止めに入ったのです。一方に加勢するのでなく、みんなで二頭を引き離したのです。ニホンザルの場合はいずれかに加勢して勝負をはっきりさせようとしますが、ゴリラはむしろ仲裁を期待しているような節さえあるそうです。勝者も敗者も作らない平和主義者の彼らから学ぶことはたくさんあるようです。(踊)