「天が裂けて」
聖書学者大貫隆先生が岩波新書から出版された『聖書の読み方』は高い内容の書物です。その中に次のような箇所があります。
マルコ福音書1章には、主イエスがヨルダン川でヨハネからバプテスマを受けた時、「天が裂けて」「あなたはわたしの愛する子、わたしの心に適う者」との声があったことが記されています。また15章には、主イエスが十字架上にお亡くなりになった時、エルサレム神殿の幕が上から下まで真っ二つに「裂け」、十字架の下にいたローマの百人隊長が「本当に、この人は神の子だった」と言ったことが記されています。
大貫先生はマルコ福音書の最初と最後にある「裂ける」という言葉に注目し、イエスが神の子であることは読者にとって初めから自明のことではない、また神の子には不可能などない、まして殺されることなどありえないといった常識的な考えを「引き裂く」仕方で明らかになる重大な事実なのだ言われます。
私たちにも神の力によって裂かれるべき、凝り固まった常識的なものがあるのではないでしょうか。 (踊)