マタイ受難曲と私

「マタイ受難曲」は、バッハが亡くなった後しばらくは上演されず埋もれていました。当時の礼拝用音楽はそういうものだったようです。しかしその素晴らしさに気づき、再び演奏を試みたのはメンデルスゾーンでした。1829年、20才の彼はベルリンのコンサートホールで自ら指揮してこの曲を上演したのです。会場にはプロイセン国王、作家ハイネ、哲学者ヘーゲルなどがおり、詰めかけた人々は感動、受難曲はもちろんバッハの教会音楽の価値が見直されるようになりました。

今年の受難節、私は例年以上にバッハの「マタイ受難曲」を聴きました。「信徒の友」(2020年4月号)の特集が「マタイ受難曲を聴こう」だったこと、それ以上に新型コロナウイルスがもたらす混乱や不安を心から払拭したい思いが強かったのかもしれません。

バッハの「マタイ受難曲」は音による〈福音書〉〈信仰書〉〈神学書〉でさえあると思います。私はこの曲を通して十字架の主の愛を再確信しました。今の緊急事態にも関わらず私は大きな平安を得たのです。イースターの朝、主キリストのご復活を静かに祝いつつ、兄弟姉妹とともに献身の思いを新たにしたいと願っています。