巻頭言「デナリオン銀貨を見せなさい」

 「皇帝への税金」の話はマタイ、マルコ、ルカの三福音書に記されています。主イエスの言葉じりを捕えようとしたのは、ファリサイ派とヘロデ派の人々でした。両者の関係は決して良好ではありませんでしたが、主イエスを無き者にしたいという点では一致していました。「皇帝に税金を収めるのは、律法に適っているでしょうか。適っていないでしょうか。…」実に巧妙に仕掛けられた質問でした。「納めよ」と言えば神の律法への背反と見做され、「納めるな」と言えばローマ皇帝への謀反とみなされるのです。

 ところが主は彼らの「たくらみ」「下心」「悪意」を見抜いて答えられました。「デナリオン銀貨を持って来て見せなさい」。彼らはそれを持ってきました。どこから持ってきたのでしょうか。質問をした人々の誰かの財布の中にあったに違いありません。いいえ、皆の財布の中にそれはあったはずです。そこにはローマ皇帝の肖像と銘が刻まれていたのです。誰もがそれを使って便利に生活し、利益を得ていたのです。主イエスはまず彼らの心にある根深い偽りを明らかにして、続いて「皇帝のものは皇帝に、そして、神のものは神に返しなさい」とお答えになったのです。(踊)