「真実のみが残る」
私は今イジク・メンデル・ボルシュタイン著『甦りと記憶―アウシュヴィッツからイスラエルへ』を読んでいます。彼はホロコーストの生き残りです。ポーランドの小さな町シュチェコチニでの平和な暮らしは、1939年8月31日ナチスによって悲劇と化させられました。1945年5月5日に解放されるまでの6年間に彼は6つのナチ強制収容所に入れられます。彼の腕に「B-94」の入れ墨が入れられ、彼は番号と化してしまいます。1944年末アウシュヴィッツからの死の行進を奇跡的に生き延びますが、解放された時彼は21才、体重は28キロでした。ナチスが徹底して行ったことは一切の人間性の剥奪でした。
ナチスは「たとえお前たちの誰かが生き残ったとしても、そいつの言うことなど誰も信じない。我々が収容所の歴史を書き、これを世界に発信する」と常々言いました。その言葉は反対に彼の心に生き残って目撃した真実を伝えようという力を与えたのです。戦後彼はパレスティナに移住しイスラエル建国に尽くします。彼は自分が生き残ったのは神の摂理と受け止めて、平和を願って自分の体験を語りました。