マルコ福音書は紀元七〇年代に最初に書かれた福音書、「詳細な導入部をもった受難物語」です。内容は大きく分けて一章一五節までは序論、九章まではガリラヤとその周辺の異邦人の地での活動、一〇章はエルサレムへの旅、その後にエルサレムでの受難と復活が記されています。
著者は主イエスを取り巻く人々の心の動きを丁寧に描写しています。ガリラヤ湖畔でパンと魚を食べ、病人たちの癒しを目撃した群衆の驚きと信仰への萌芽、驚くべき出来事を目撃しながらもイエスに敵対するファリサイ派、ガリラヤ湖の暴風などを通して主の力を経験し、ついに「メシア」と告白するも、なお主が選び取ろうとする十字架への道が理解できない弟子たち。けれども主は、やがて彼らがはっきり理解できる時が来ることを確信し、力強く導いて行かれたのです。
マルコ8章22~26節には主イエスがベトサイダで盲人を癒された物語が記されています。主イエスは彼の目にそっと触れて「何か見えるか」と問い、もう一度優しく触れ、ついに「何でもはっきり見えるように」してくださいました。主は私たちの目をも開き、本当に大切なものを次第に見えるようにしてくださるお方なのです。