新約聖書にある四福音書で、主イエスの誕生物語を記しているのはマタイとルカだけです。マルコにはありません。主イエスの公生涯から書き始め、十字架と復活に集中しています。ヨハネは「初めに言があった。言は神と共にあった」と書き出し、主イエスの先在性を伝えようとしています。マタイとルカだけが、人としての誕生から書き始めるのです。
しかしマタイとルカの記述には相違があります。マタイには主イエスの養父となったヨセフが登場し、幼子を最初に礼拝に来たのは東方の博士たち・異邦人でした。ルカには主イエスの母となったマリアが登場し、最初の礼拝者たちはベツレヘムの羊飼いたち・ユダヤ人でした。
マタイとルカが互いに執筆分野を分担したとは思えません。各々が「神の霊の導きの下」に書いたのでしょう。結果、神の御子の救いの豊かさを余すところなく示すことになるのです。信仰に生きるヨセフとマリアが共に神の働きを担います。神の救いはユダヤ人だけでなく異邦人にも、富む者にも貧しい者にも、今日の私たちにも確かに及ぶのです。福音は「民全体に与えられる大きな喜び」(ルカ2:10)なのです。