福岡地方連合壮年会「この福音のために力を合わせよう」
日時2012年10月14日(日)午後3時 於西南学院教会
踊 一 郎
福岡地方連合壮年会の目的は教会形成と伝道者養成の推進だと聞いています。「推進」という漢字は国語辞典によると「物を前に推し進めること」「事業や運動などを達成しようと努めること」、漢和辞典によると、「推」は「隹」+「扌」、「隹」はずんぐりと下ぶくれの鳥の姿、「扌」は手、意味はずっしりと重みや力をかけて押すこと。「進」は「隹」+「辵」、意味は鳥が飛ぶように前に進むこと。壮年会の皆さんが「教会形成」と「伝道者養成」を主から頂いた使命として受け止め、それを全力で前に推し進め、鳥が空をぐんぐん飛ぶように進めてくださっていることに感謝しています。
この2つの使命―教会形成と伝道者養成―は密接な関係にあります。福音を力強く語る伝道者があって堅固な教会は形成されますし、福音に力強く生きる教会があって新しい伝道者は次々に起こされます。
この2つの働きはとても楽しい働きです。決して苦虫を噛んだような顔で考える課題ではありません。わくわくしながら考える課題、この課題について意見を交換すると気持ちが明るくなってくるような課題なのです。
ただ現実の教会に改めるべき問題がないわけではありません。福音宣教のために力を合わせるべき牧師と執事、牧師と信徒が真実互いを信頼し、愛し、祈り合っているかどうか。アダムとエバは最良の助け手として神が創造されたとありますが、牧師と執事も神が福音宣教のために祈りと力を合わせるために備えてくださった「助け手」です。しかしここに病がある場合が多いのです。辻宣道先生の『教会生活の処方箋』は執事の方にはぜひ読んで頂きたい本です。「役員のつとめについて」「役員の資質について」「牧師を育てる教会とは」・・・。
私の家族の経験を証してみようと思います。県庁職員だった父が献身、今治、東大阪、神戸西の開拓に従事、それぞれ教会組織をしました。子どもの目から見ると、貧しく労苦の多い牧会生活でした。日曜の明け方まで説教を準備していました。その説教準備のために必要な書物さえ購入できない状態でした。そんな父の姿を見て私は「割に合わない。決して牧師にだけはなるまい」と決心しましたが、しかし結局神の召しに応えました。福音を語る時の父の嬉しそうな表情が私を献身へと押し出しました。今年6月、父は87才で召されました。父の最期の言葉は「楽しかった」「みんな仲良くね」でした。父は本気で福音の喜びに生きていたのだと確信しました。
私の長男も主の召しを頂き、今久留米教会で伝道牧会の働きに当たっています。妻と結婚した時、3つのことを約束しました。①どんなに仲たがいしても食事の前には仲直り。牧師は伴侶と一日に三度食事をしますから、三度仲直りのチャンスがあります。おかげでこれまで喧嘩らしい喧嘩は一度もしませんでした。②教会から謝礼を頂いたらまず夫婦で祈って感謝、それから献金と生活のために用いる。実は鳥飼教会の副牧師だった頃、故大場隆康執事から謝礼を頂いた時、「先生のために祈らせてください」と言われ、その後「先生も教会のためにお祈りしてください」と言われたのです。頂いた謝儀の恵みが倍加するのを感じました。早速家に戻って妻にこのことを話し、以来我が家でも二人で祈り合ってから用いるようになりました、今も続けている習慣です。③牧師館では教会と教会員の悪口は言わない。子どもが教会を嫌いにならないためでした。でも子どもの心は敏感ですから何も言わなくても感じるのです。だから日曜日はできるだけ外食にしました。子どもたちに日曜日は楽しいと思ってもらいたかったし、妻には休息を与えたいと思ったからです。
牧師になって36年、今私が諸教会・伝道所の役員や壮年の皆さんにお願いしたい2つのことがあります。①時には牧師にねぎらいの言葉をお願いします。西南学院教会のある役員は、主日の夜など「牧師先生、今日はご苦労様でした」と電話をくれます。教会が混乱していた時などは、一人の姉が牧師館の玄関を訪ねて花一輪をくれました。「先生、お祈りしていますね」。どれほど嬉しかったことか。元気が湧いてきました。②牧師の伴侶へのいたわりをお願いします。私の妻に「教会の働きを一緒に担っていて嬉しいことは何だった?」と尋ねましたら、90数歳の老姉が口癖のように「西南学院教会という牧場で養われている恵みに感謝します。牧師先生ご夫妻の健康が守られますように」、50代の姉が「大好きな西南学院教会に今日も来れて感謝します」と祈られることだと言いました。愛ある言葉が元気を与えるのです。それから具体的な提案ですが、牧師の伴侶は牧師より働いているのですから一年に一度くらいはその労をねぎらうために花束でも贈呈してはどうでしょうか。役員がそういった配慮を始めると、教会全体がそれに倣うようになるにちがいありません。教会全体に優しさがあふれてきます。
そうするとどうなるのでしょう。素晴らしい連鎖が起こります。教会員のあたたかい言動→牧師と伴侶が楽しくなる→教会全体が明るくなる→新来者が増える→財政的にも祝される→若者たちから次々に献身者が起こされる、という具合です。
皆さんの中には「そんなことで教会が成長するだろうか?」「そんなことをしたら牧師は調子にのって今より働かなくなるのではないか?」と思う人がいるかもしれません。心配無用。牧師は主のために働くことを喜びとしているのですから、もっと働くようになるのです。愛媛県今治に「他(た)抜(ぬ)き最中」(母恵夢(ぽえむ)本舗)というお菓子があります。たぬきの形をしたもなかです。その宣伝文句は「だまされたと思うて食うてみい」。だまされたと思って一度やってみてください。