「ゆっくりていねいに」
聖学院大学が発行した冊子「子どもの心にそっと寄り添う―被災地の子どものケア」を取り寄せて読みました。窪寺俊之先生、阿久戸光晴先生、姜尚中先生、秋山淳子先生のそれぞれの文章は心に響くものでした。(姜尚中先生は3月まで東京大学大学院教授でしたが、今年4月からは聖学院大学教授に就任されるそうです)有益な冊子でした。ここでは阿久戸光晴先生の「物語が心の窓を開く」という一文を少しご紹介したいと思います。
さまざまな痛みによって傷ついてしまった心を、たちまち回復させる特効薬などないのかもしれません。しかし、一冊の本や物語の世界観に出会い、イメージを受け止めて共鳴できた時、きっと何かが変わり始めることが期待されます。それは、まるで絆創膏のような安心感とともに、心の傷(創)を覆って(膏)しっかり包み込(絆)、ゆっくりと、じんわりと浸透していきながら、穏やかな作用の癒しにつながっていくはずです。
そして5冊の絵本と一つのDVDが紹介されていました。ピーター・レイノルズ『てん』、マックス・ルケード『たいせつなきみ』、益田ミリ『はやくはやくっていわないで』、宮沢賢治『注文の多い料理店』、キャロル・マックラウド『しあわせなバケツ』、DVD『素晴らしき哉、人生!』。
『はやくはやくっていわないで』についてはこう解説されていました。
海原を「はやくはやくっていわないで」といいながら進んでいく小さな船。「ひとつ ひとつ じゅんばん ちがう」「くらべられたら どこどきする」「どうして いそぐ」「いそいで どこいく」と小さな船のまっすぐな問いかけが、子どもをホッとさせ、大人をハッとさせる絵本『はやくはやくっていわないで』。対象年齢「0歳から100歳まで」と付記された、さまざまな読み方が可能な一冊です。
2012年度は教会堂建築、献堂式、そして教会創立90周年記念礼拝・・・、一つ一つが祝されました。感謝せずにはいられません。2013年度はどのように歩みましょう? 主が私の心に示してくださったキーワードは「ゆっくりていねいに」です。31年前に西南学院教会に赴任した時、ある日坪井正之執事が語ってくださった言葉です。先生は特別な意味を込められなかったのかしれませんが、私の心には一つの啓示のように響きました。
今年度は主が与えてくださった新教会堂で兄弟姉妹の交わりを豊かにしたいと思います。主題は「喜びの共同体」、主題聖句は「主を喜び祝うことこそ、あなたがたの力の源である」(ネヘミヤ記8:10)。会議だけに多くの時間を使うのではなく、主が与えてくださった交わりをまず感謝したいと思います。一つ一つの働きを祈りつつ〈ゆっくりていねいに〉行いましょう。そうすれば私たちをはじめ新来者の心にも喜びが満ち溢れることでしょう。