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Voice to Voice 「子育ての窓から福音の光を」

Voice to Voice 「子育ての窓から福音の光を」  西南学院教会 踊 純子

子どもを育てる3つの言葉を存知ですか。「お母さんはあなたが大好きよ。」「あなたはお母さんの大切な宝物よ。」「お母さんはいつでもあなたの味方よ。」子どもが何度でも聞きたい、ずっと味わっていたい嬉しい言葉です。

最近は「イクメンパパ」が増えてお父さんも育児に関心を寄せています。私の教会に隣接する西南幼稚園でも、多くのお父さんが様々な行事に参加されるようになりました。とても嬉しいことです。けれども親たちは溢れる情報の中で、何に依って我が子を育てたら良いのか悩んでいます。時に、よその子と比較してあせったり落ち込んだりします。また家庭は子どもが育つ大切な基地でありながら、時にすれ違い、傷つけ合って病んでしまいます。『家という病巣』『家庭という病巣』などという本が出版されるほど、家庭は希望と同時に深刻な危機をはらむ場所にも成り得るのです。そして頑張る親ほど孤独感に陥ってしまい、親の不安、あせりがもろに子どもに影響を与えてしまうのです。

そんな親たちに、教会は何を提供出来るでしょうか。行政や民間の子育て支援機関では得られない、教会だけが与えられるものがきっとあると思うのです。

まず教会だけにあるもの、それは聖書、神の言葉です。冒頭で子どもを育てる3つの言葉をご紹介しましたが、それはそっくり親自身が聞きたい言葉なのです。教会で神様の声を聴いて癒されリセットされて、お母さんもお父さんも、もう一度優しい気持ちで子どもに向き合う元気が湧いてくるのです。

また教会には様々な世代の豊かな交わりがあります。教会で出会う先輩ママやおばあちゃんの信仰と経験に基づくアドバイスは、孤独な心を和らげ、育児の視点を広げるヒントを与えるのです。

西南学院教会では子育て真最中のお母さんのために「聖書に親しむ会」を月一回行っています。この会は30年前、幼い子どもを抱えた母親たちの声によって始まりました。「主日礼拝に来てもゆっくり聴けない。」「教会に来ても騒ぐ我が子への視線が気になって落ち着かない。」「毎日いらいらしてしまう、こんな時こそみ言葉を受けたい。」それでゆっくり過ごせるようにと、火曜日に会を始めたのです。そこでは子どもが騒いでも大丈夫、子どもの遊ぶ傍で親たちは牧師を通して聖書一句から育児のヒントを学びます。そして手作りのお菓子を食べながら互いの育児経験や課題について何でも語り合うのです。これまで多くのお母さんが励まし合いながら子育てをしてきました。私自身も3人の子育ての時期、どれ程助けられたことでしょう。子育てが終わった今、私も育児応援団の一人として会をサポートしています。

忘れられないエピソードがいくつもあります。Sさんは教会で結婚式を挙げたのをきっかけに会に参加するようになりました。やがて3人の母となり、いつしか子どもを大声で叱るようになっていました。そんな時夫が言ったのです。「君頼むから教会に行ってくれ。少し優しくなってきてくれ。」Sさんが教会の交わりの中で癒され穏やかになることを夫はよく知っていたのです。その一言で彼女は喜んで教会生活をするようになりました。やがてクリスチャンとなり、3姉妹の子育てが一段落した今、彼女は教師として活躍しています。Mさんは幼いH君を連れて再婚、やがて弟が生まれました。けれどもH君はどうしてもお義父さんに馴染めず度々家出をするようになりました。一度彼は意外な場所に隠れていました。自宅マンション向かいのビルの非常階段です。寒い夜、冷たい風に震えながら自宅の灯りをじっと見つめていたのです。あまりに切なくて胸が締め付けられる思いでした。掛け違えたボタンを上手く付け替えることが出来ない家族、そんなH君にとって教会は唯一落ち着ける居場所でした。またあるお母さんは幼い頃に親から受けた虐待のトラウマに悩み、子育てを楽しむことが出来ずにいました。彼女にとってこの会は癒しの場になりました。

これまでの歩みを振り返ると、教会での子育ては単に子どもが成長しただけでなく、親自身の信仰、心が育てられていたことに気づかされます。またこの働きを通して、教会の交わりも確かに豊かに育ってきたと感謝しています。

年々少子化が進む今、教会には子どもの明るい声が飛び交っていますか。可愛い笑顔が見えるでしょうか。子育て真最中のお母さんがほっと一息つける場、神様の愛に出会える場、もう一度頑張ってみようと勇気が与えられる場、教会がそんな場所になれたらどんなに素敵でしょう。子育てという窓から福音の光が豊かに注がれるよう、教会の扉を大きく開きましょう。

(日本バプテスト女性連合機関紙『世の光』6月号より)

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